家族や家といったものの形が変容する時代の中で、お墓の在り方もまた変化しています。
従来のような「家」「家系」にとらわれたお墓ではなく、新しい形のお墓として「樹木葬」は徐々に多くの方から支持を集めている埋葬方法です。その樹木葬によって埋葬される場所が「樹木葬墓地」と呼ばれおり、現在全国には私営・公営を含め30ヶ所ほどの樹木葬墓地があるといわれています。
樹木葬墓地の始まりは?
樹木葬墓地とは、樹木葬を行うための場所である墓地を意味しています。
日本で初めて樹木葬を始めたのは、岩手県一関にある知勝院というお寺です。1999年に雑木林づくりと墓地とを合体させた、散骨ではない自然への埋葬方法として、山に遺骨を埋葬するという樹木葬を始めました。知勝院の樹木葬墓地は広大な敷地の雑木林です。
こちらの寺院で墓標として植樹されるのは、ヤマツツジ、エゾアジサイ、ナツハゼ、ウメモドキといったそれほど大きくはならない樹木で、植樹する地域で育つことができて生態系を破壊しない自然な植物が選ばれています。
都市型樹木葬墓地とは?
上記のような山林・雑木林といった場所への埋葬方法を取る樹木葬墓地とは異なり、比較的都市に近い場所に設けられた樹木葬墓地もまた近年増えてきている形式です。
このいわば「都市型」樹木葬墓地の特徴は、限りあるスペースを有効活用した樹木葬です。比較的多いのが、「シンボルツリー」と呼ばれる大きな樹木を囲むようにして遺骨を埋葬する形式です。小さなプレートや石碑を個々に設けることもありますし、個別にきちんとした区切りを設け、スペースを確保する樹木葬墓地もあります。
最近人気がある都市型の樹木葬墓地として、「ガーデンタイプ」というものもあります。こちらは草花が咲く、美しい庭園のような雰囲気をもつ新しい形式の樹木葬墓地です。墓標の代わりの薔薇などの花を植樹します。伊豆大島にある樹木葬墓地では、伊豆大島にゆかりの様々な品種の椿や桜を植樹するというようなことを行っています。
樹木葬墓地に埋葬するメリットは?
樹木葬墓地に埋葬するメリットはどのようなものがあるでしょうか?
永代供養ができる
家族の形式が多様化し、従来のように子孫がお墓を引き継ぐということが難しくなっているのが昨今です。「お墓の後継者がいない」「子供がいない」「個人のお墓に入りたい」といったような様々なニーズに応える形で、永代供養墓というものが一般的になってきました。
そのメリットが、「家のお墓」ではなく「個人のお墓」である樹木葬墓地にもあります。生前に自分で費用を負担すれば、その後の一切の費用負担や、供養の心配はなくなります(ただし、全ての樹木葬墓地が永代供養墓だというわけではありません)。
死後は「自然に還る」という思いを実現できる
「死んだら遺骨は海に撒いて欲しい」「山に撒いて欲しい」。
このような希望を口にされる方がいらっしゃると思います。しかし、この方法にはいくつかの問題点があります。 現在定められている墓埋法では「焼骨の埋蔵は、墓地以外区域にはしてはならない」という法律上のルールがあります。山などに遺骨を勝手に埋蔵することは法律上禁止されています。
一方で、海に散骨する場合には、やや曖昧なルールとなっています。「「遺骨」を撒くのは禁止だが、「遺灰」なら問題ない」という捉え方をされる場合が多いのが実情です。つまり、「遺骨」を「遺骨」とわからないような細かな粉にして、人や漁業などに影響を与えないような場所の海に撒くのは法律上許される、というわけです。違法ではないのですが、場所選びなどは慎重に行わないといけません。
つまり、自然に還ることを望んだとしても、実際にそれを実現させるのは遺族にとってはなかなか大変なことなのです。しかし、樹木葬墓地への埋葬を選べばそのような心配は一切ありません。生前に自分で手続きもできますから遺族を煩わせる心配もなく、土に還るという希望を実現させることができます。
一般的な墓地より費用負担が少ない
従来の墓石や墓所を購入し、お墓を作るということは、費用的に決して安いものではありません。
お墓に対してそこまでの金額を出したくない、無理のない範囲で埋葬をしたいという方にとっても、樹木葬墓地を選ぶことは大きなメリットがあります。墓石を建てる場合は、最低でも100万円の費用はかかってしまいます。
一方で樹木葬墓地への埋葬は最高でも100万円以内です。10万円~80万円程度の間に納まるケースが多いとされています。この金額は埋葬や供養のための費用の心配をしている方にとっても、納得のいく範囲の費用ではないでしょうか。